バイデン ハリス ペロシ (1)

演説するバイデン氏に拍手を送るハリス副大統領(左)とナンシー・ペロシ下院議長(右) 
2021.4.29女性の上院議長(=副大統領)、下院議長は共にアメリカ史上初である。

(大統領継承法による大統領権限の継承順位は、副大統領、下院議長の順)

 

 今回このブログに初めて登場するナンシー・ペロシ(1940.3-  81)は、5人の子供の母であり、アメリカ史上初の女性の下院議長である。民主党所属で1987年の下院議員選挙にサンフランシスコから出馬して当選(47歳)。以後11回当選している。(ちなみに下院議員の任期は、2年である)
 60代下院議長(2007-2011)を務め一旦は下院議長の座を共和党に明け渡したが8年ぶりに63代下院議長(2019-)に復活し現在に至る。オバマ大統領、トランプ大統領、そしてバイデン大統領それぞれの下院議長として共に仕事をしてきたベテランの政治家である。
 オバマ元大統領が回想録の中で語るところによれば「彼女が権力の階段を上り詰める事ができたのは、まぐれでもなんでもない。ナンシーは東部のイタリア系アメリカ人の家に生まれた。父親がメリーランド州ボルチモアの市長を務めていたこともあり、幼少よりイタリア人街のボスや港湾労働者たちと交流していた。政治の世界でも物事を決着させるためならひるまず強硬策に打って出る。夫のポールと共に西海岸へ移ってからは、夫がビジネスの成功を収める一方、彼女は家で5人の子供を育てた。だが、やがては若くして仕込まれた政治教育を生かして、カリフォルニア州の民主党と議会の双方で着実に頭角を現し、アメリカ史上初の女性下院議長となった。」(「約束の地」オバマ大統領回顧録Ⅰより)

 私がナンシー・ペロシの凄さを知ったのは、2020年2月5日、かのトランプ大統領が議会で毎年恒例の一般教書演説をした後の彼女のリアクションを映像で見た時だった。彼女は彼の演説原稿のコピーをビリビリと手で引き裂いたのだ。
(下記写真参照)
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「凄さ・その2」。ネット検索(キーワードペロシ 長い演説)から得た情報によれば、2018年2月、院内総務(77歳、院内会派のリーダー)の時、10㎝のヒールで8時間を超えて立ったまま大演説をした。その間に水以外何も口にしなかったという事実。少なくとも過去108年間の議会演説の最長記録*を打ち立てたという。

*これは米国上院における議事妨害「フィリバスター」(議員の発言時間が無制限)とは違う。

その内容は、未成年時に親に連れられ不法入国する形で米国に来た移民の若者たち、いわゆる「ドリーマー」の国外退去を回避する移民法案について採決を行うことを、下院議長が確約しない限り与野党指導部の予算合意に反対するというものであった。

 さらに2019年1月、彼女が下院議長に復活した時の挨拶も紹介したい。

「女性の参政権100年を記念する中で、この下院の女性議長になれることを特に誇らしく思います。加えて私たちが、史上最多の100人を超す女性議員と共に奉仕できる機会を得たことも、栄誉であり誇りに思っています」。
当時、下院議員定数
435人中女性102名の当選が話題になったが、女性ならではの言葉であると思う。

 

現在、ペロシは移民の権利、性的マイノリティの保護、中絶の自由化の為に奮闘を続けており議員活動の集大成にふさわしい活動が期待されている。

 

下記の写真は、2004年カマラ・ハリスが、サンフランシスコの地方検事に選出された頃の写真。この時期には、既に二人は知り合っていたが、その頃果たして、17年後の2021年に副大統領と下院議長として大統領の両脇に立つことを予期していたであろうか? ともかくハリス副大統領の誕生には米国の女性議員の層の厚さにも支援されたというのは事実であると思う。

 ハリスとペロシ

2004年、下院、院内総務のナンシー・ペロシと

   (カマラ・ハリス40歳とナンシー・ペロシ64歳)

 

 

当初、このシリーズは、ハリスを理解するために彼女のこれまでなしてきた仕事を彼女自身の著書から紹介したいということから始めたのですが、少しばかり方向が変わってきました。・・・次回もよろしくお願いします。